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めざせ!次世代のグローバルリーダーー進化するキャンパス内国際交流ー

深海堆積物中の細菌から?新たな医薬品の可能性を探る

[専門領域] 微生物学、分子微生物学、ケミカルバイオロジー
[研究テーマ]
●海洋放線菌の分離と分析
●二次代謝産物の生合成 など
重要な医薬品やその他の有用な化合物を生産する菌として知られる放線菌。その可能性に魅せられ、特に海洋放線菌からの遺伝物質の探索と採掘や二次代謝産物の生合成に焦点を当てて研究を行うUlanova先生に、この分野の面白さや世界の研究者から見た188bet体育_188bet赌场-【平台官网】の魅力についてお話を伺いました。
内陸の国チェコから、海の国日本へ
私はヨーロッパ中東部の内陸に位置する国、チェコ共和国の大学?大学院で生物について学びました。博士課程を修了して次のキャリアを探していた時、大阪大学に興味の持てる研究室があることを知り、ポストドクターとして来日しました。そこで2年間勤めた後、188bet体育_188bet赌场-【平台官网】の特任助教のポストに応募してここに来ました。
チェコには海がないけれど、高知には美しい海があります。もともと私は土壌微生物を研究していましたが、まだ見ぬ海の微生物に興味を抱き、高知で研究を行うことを決めました。
高知の海をフィールドに研究生活を楽しむ!
大阪大学にいた頃、私は新幹線が通っている場所しか行ったことがありませんでした。だから高知駅で乗り換えが間に合わなかった時、すぐに来るだろうと思ったら次は1時間後と知り、ショックでした(笑)。カルチャーショックです!
けれど、188bet体育_188bet赌场-【平台官网】の研究環境は、大阪大学とそれほど変わりません。分析機器もDNA解析の装置などいろいろあります。少し不便なのは、学会やセミナーなどの探求機会に参加しようと思った時に飛行機で行かなければならない点ですが、コロナ禍を経て今はオンライン開催も増えており、お金が節約できるし、むしろ交流の機会としては増えています。これは学生にとってはよいことだと思います。
高知のフィールドとしての優位性は、やはり豊かな自然があることです。私たちが扱っているのは環境中から採取してきた微生物です。高知は山もあるし、海がとても豊か。そして海にも様々な環境があり、大学の海洋生物研究教育施設がある宇佐は湾になっているし、西は大月町、東は室戸と全く様相が異なり、幅広く調査することができます。
また研究だけでなく、個人的にも海を楽しむことができるのもよい点です。私はダイビングをしていて海に潜ることが大好きなので、研究のかたわら、海のアクティビティなどもよく楽しんでいます。

大きな可能性を秘めた海洋微生物
研究において私がターゲットにしているのは、浅い海の堆積物や海面近くにいる放線菌です。放線菌は細菌の一種で、抗生物質の生産能力に優れていることで知られています。近年は抗生物質の不足や耐性菌の出現などの問題もあり、その新たな探索について、社会からの要請は増えています。
実は、現在使われている抗生物質のほとんどは土壌微生物由来の化合物です。土壌中からももちろん新たな発見の可能性はありますが、海など異なる環境に大きな期待が寄せられています。
そして、ひとくちに海と言っても、浅い海、深海など環境によって圧力や栄養、酸素など条件が異なります。私が浅い海の堆積物を対象にしているのは、サンプリングしやすいことが第一の理由です。大学の調査船だと200メートルくらいまで採取が可能です。また、海面付近では様々な動植物が微生物と共生しており、その共生微生物は他の動植物との栄養交換や化合物の交換によって新しい機能や物質を作っている可能性を持っていることから、海面にも注目して研究を行っています。

培養している微生物

培養した微生物を顕微鏡で観察

採取してきた試料
学生と一緒に調査船で海へ
私の研究室の学生たちは、今、深海から採取してきた微生物を実験室で培養しています。今年度はちょうど、東京で出航して八戸まで行く深海調査船があり、学生の一人はそれに乗って青森の海などでサンプリングをしてきました。
培養は28°Cの室温で行っていて、遺伝子レベルで同定を行い、報告されているものか新規のものかを確認します。その中でポテンシャルのありそうなものが見つかれば、それをメインに研究することもあります。
海に出る頻度は個々の研究テーマによって様々で、188bet体育_188bet赌场-【平台官网】の調査船であれば毎月のように使うこともできるし、少なければ半年に2~3回くらいという学生もいます。大学の船を使う時は、状況が許せばダイビングやシュノーケリングで試料を採取することもできます。シュノーケリングは資格不要なので、学生たちも調査可能です。

グローバルな視野を持って学べる環境がある
「資源」という視点で日本を見ると、石油やレアメタルといった鉱物資源は少ないかもしれませんが、生物資源はとても豊富です。日本は国土が長いので、海も亜寒帯から亜熱帯まで、また日本海側、太平洋側、大陸棚、深海など多様な環境があります。そうすると生物のグラデーションなども研究できるし、注目している海外の研究者も多くいます。
また、物部キャンパスには地球掘削科学国際研究拠点である「188bet体育_188bet赌场-【平台官网】 海洋コア国際研究所」があります。海洋コア国際研究所はJAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)との連携協定のもと、「高知コアセンター」を共同運営しており、その研究設備?機器?試料は、世界の研究者が利用できます。ここには地学や生物学の専門家たちがたくさんおり、JAMSTECをはじめ国内外の研究者が一緒に研究を行うなど、国際的?学際的な交流の拠点となっています。海底資源環境学や海洋生命科学、農芸化学などの分野では、テーマによっては学生でもそういった世界レベルの研究に触れたり、施設や試料を利用したりするチャンスがあります。
そして何より、188bet体育_188bet赌场-【平台官网】は教員と学生の距離が近く、ディスカッションや交流がいつでもできるというよさがあります。自然が好きで、研究に没頭したいという人には、最適な学びの環境です。そういう人に、ぜひ188bet体育_188bet赌场-【平台官网】に来ていただけたらと思います。
教員の所属コース詳細

教員と学生の距離が近いのが188bet体育_188bet赌场-【平台官网】の良さ