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乳腺腫瘍外科

乳腺腫瘍外科では、乳がんを中心に乳腺疾患全般の診断と治療を行っています。
特に、乳がんの精密検査から手術、ホルモン療法や抗がん剤などの薬物治療、遺伝性乳がんの診療を担当し、さらに転移を伴う進行、再発乳がの治療を行っています。多岐に渡る乳がんの診療の中で、治療を受けながら生活する患者さんを様々な角度から支援できるように、乳腺外科に加え形成外科?腫瘍内科、放射線科などの診療科?医師?看護師?薬剤師?ソーシャルワーカーなど様々な職種のスタッフが情報を共有して診療?ケアにあたっています。
また、遺伝性乳がんにも対応するために臨床遺伝診療部と協力して臨床遺伝専門医?認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングや遺伝子検査も行っています。

概 要

乳腺腫瘍外科では次のような疾患を対象にしています

乳癌、乳腺の良性腫瘍、乳腺炎など

乳腺腫瘍外科では次のような症状を扱っています

乳腺疾患

  • 乳房にしこり(腫瘤)を触れる
  • 異常な乳頭の分泌(特に、血性のものや褐色のもの)
  • 腋の下のしこり(リンパ節の腫大)
  • 乳頭のびらん(発赤やかゆみ)
  • 乳房の皮膚の発赤やむくみ
  • マンモグラフィ(乳房圧迫レントゲン)で石灰化や腫瘤などの異常を指摘された

遺伝性腫瘍

  • 家族や親族に乳癌?卵巣癌の患者さんがいて遺伝について心配をしている
  • 自分自身が若年発症や男性の乳癌で遺伝について心配をしている

診療体制

外来診療は月?水?金で、午後も診療を行っています。遺伝性乳がん卵巣がんの遺伝カウンセリングは金曜日の午後を中心に完全予約制で行っています。化学療法は外来化学療法室を使用して月?水?金に行っています。また、セカンド?オピニオンのために来院される方は、初診時は資料の確認と診察を行い、説明に十分な時間をとるために通常診療時間外に予約を取って対応しています。

診療方針

乳癌治療には手術?放射線の局所療法と抗がん剤治療?ホルモン療法?分子標的薬などの全身療法を病気の状況に応じて使い分ける必要があるため、様々な選択肢があります。方針の決定に際しては、いわゆる「科学的根拠」に基づいた治療について説明を十分に行い治療方針を選択していただくようにしています。例えば、乳房温存療法の適応とならない大きなしこりの乳癌でも手術前に抗がん剤治療を行って、しこりを小さくすることで乳房温存が可能となる場合がありますし、やむなく乳房切除が必要な場合も形成外科と協力して同時に乳房を再建する手術も積極的に行っています。また、腋の下のリンパ節をたくさん取る(リンパ節郭清という手技)と腕のむくみの原因になるため、これを省略するためのセンチネル(見張り)リンパ節生検という方法を行っています。

得意分野

  • 乳癌の診断?治療全般および良性乳腺疾患の診断?治療を行っています。
  • マンモグラフィ検診で発見される触れることのできない病変(石灰化など)の
    診断ではマンモトーム生検を導入しています。
  • 化学療法は出来るだけ外来で行うようにしてます。
  • 乳房温存療法の適応拡大、センチネル(見張り)リンパ節生検の導入による
    腋窩リンパ節郭清の省略などを行っています。
  • 乳房切除が必要な場合は乳房再建を積極的に行っています。

乳腺腫瘍外科で実施している主な検査は次のようなものです

▼ 乳腺疾患

マンモグラフィ
乳房を圧迫して撮るレントゲンです。多少の痛みがありますが、円錐形の乳房をそのまま撮影すると頂点である乳首側はまっ黒に、底部である乳房の付け根側はまっ白に写ってしまうため、乳房を平均的に平たくする圧迫が必要です。さらに、乳腺を引き伸ばすことで、乳腺同士の重なりが少なくなり、より小さな病変を見逃さないようにできますのでご協力ください。マンモグラフィは触診や超音波で見つけることの出来ない石灰化や小さな病変を写し出すのにすぐれています。

マンモグラフィで発見された乳がん

超音波
乳房内の腫瘤の有無や腫瘤の形や内部構造を細かく観察できるため乳房のしこりの診断には欠くことのできない検査です。また、ドップラーという装置で血液の流れ具合を見ることができ、悪性の指標である病変の増殖する能力の高さを判定できますし、エラストグラフィを行うと病変の硬さを正確に知ることができ良悪性の判定に役立てています。

超音波で発見された小さな乳がん

穿刺吸引細胞診
超音波で腫瘤を確かめながら、細い注射針で腫瘤を穿刺して注射器で針の筒のなかに細胞を吸引する方法です。 当院では検査部(細胞診断士)の協力で、針を刺す現場で迅速に標本を染色して診断に必要な量の細胞が採取されているか否かを顕微鏡で確認しています。このため、細胞の不足で診断できないことや意味なく何度も針を刺すことのないようにしています。また、採取される検体が少ないため診断にある程度限界がありますが、検査から結果報告までが2日間(休日を除く)と短く、結果待ちの不安を解消するのに役立っています。

コア針生検
局所麻酔下に細胞診よりもやや太い針を刺し、腫瘤の組織を削り取り、顕微鏡で乳がんの確定診断をします。また、乳がんと診断された場合は、同時に免疫染色という方法で乳がんの性質を診断して手術前に薬物療法を含む治療全体の流れを決定することができます。

マンモトーム検査(吸引補助針生検)
通常の穿刺吸引細胞診や針生検よりも多くの組織を取ることのできる方法です。しかも、手術的な方法よりもはるかに小さな傷で診断に十分な量の組織を取ることができます。特に、マンモグラフィで発見される触れることのできない病変(石灰化病変など)では、少し方向をずらした2枚のレントゲン写真で病変の位置と深さを正確に計算して、このマンモトームを刺し込んで組織をとることで診断が可能となりました。

マンモトーム生検で乳がんと診断された石灰化病変

乳管造影検査
異常乳頭分泌を認める乳管の開口部に細いチューブを入れて造影剤を注入した後、マンモグラフィ検査を行い、分泌の原因を調べる検査です。

造影MRI
乳房温存療法を行う場合、しこりの周辺の乳管の中の癌の広がりを知るために役立ちます。 その他、病気の状況に応じて骨シンチグラム?腹部超音波?胸部?腹部CT、頭部CT?MRI?PET-CTなどで転移のチェックを行うこともあります。

乳腺腫瘍外科で実施している主な治療は次のようなものです

▼ 乳癌の手術

乳房温存術
乳房温存を予定する場合は通常のマンモグラフィ?超音波検査に加え造影MRI検査を行い、乳房内での癌の広がりを把握して過不足のない腫瘤の切除を行い、乳房内再発の危険が増すことなく美容的な満足が得られるよう努力しています。多くの場合、術後に放射線治療を受けていただいています。

乳房温存術後

乳房切除術
しこりが大きい、乳管の癌の広がりが乳房の1/4を超える、癌が多発している、術後の放射線療法をしてはいけないなどの場合は乳房切除を行うことがあります。ただし、しこりの大きさが原因になる場合は、手術前に抗がん剤治療を受けることで乳房温存が可能になることがあります。また、乳房切除が必要な場合もご希望と状況に応じて形成外科と協力して乳房再建を行う様にしています。
再建を行う場合は、乳房切除の方法も状況に応じて、正面からみえない傷でできるだけ乳房の皮膚を温存したり、乳頭を温存したりする場合もあります。
また、再建方法も自分の身体の一部(自家組織)を用いて再建する方法や人工物であるシリコンインプラントを挿入する方法などさまざまな方法がありますので、患者さんの乳がんの状況とそれぞれの利点?欠点を知っていただき手術法を選択するようにしています。

乳房切除後
乳房再建

センチネル(見張り)?リンパ節生検
乳癌の手術時に行われる腋の下のリンパ節をたくさん取る腋窩リンパ節郭清による腕のむくみ(リンパ浮腫)は生活に質を大きく低下させます。そこで、触診や画像でリンパ節転移を認めない場合は、乳房から最初にリンパの流れを受けるセンチネルリンパ節を見つけて、そのリンパ節のみを切除し転移がない場合は腋窩リンパ節郭清を省略するようにしています。センチネルリンパ節を見つける方法として、当院では色素法?放射性同位元素を用いるRI法に加え、本学で開発したカラー蛍光カメラを用いたカラー蛍光法を併用し、より正確にセンチネルリンパ節を診断しています。

RI法?カラー蛍光法

外来化学療法
術前?術後の補助療法としての治療も進行?再発乳癌の治療も身体の状況がゆるす限り、副作用をコントロールして外来で行っています。
*乳癌の再発危険性を下げるためには抗がん剤治療?ホルモン療法などの適正な全身療法を受けることが大切です。

▼ 良性乳腺疾患の手術

腫瘤摘出術
良性疾患でもしこりが大きく美容的な問題がある場合や悪性疾患が否定できない場合は局所麻酔でしこりを摘出することがあります。

乳管腺葉区域切除
異常乳頭分泌の原因となる乳管内乳頭腫という良性腫瘍やごく初期の乳管内癌の治療法として、分泌に関わる乳管と乳腺の部分と一期的に切除する方法です。