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第三報 メルボルン?St Vincent's Hospital留学体験記 ~留学生活、そしてニューサウスウェールズへ~

メルボルンでの留学生活、そしてニューサウスウェールズへ

重松ロカテッリ 万里恵 先生

前回もお伝えしましたが、病院の規定で院内の写真を撮ったり、出来事をSNSにアップすることは厳しく禁じられていますので(誓約書まであります)可能な範囲での病院の様子と、ライフワークバランスについてお話しさせていただきます。

私の勤務するSt Vincent Hospital Melbourne は手術室が12室、年間全身麻酔数が12000件程度で、脳外科、心臓外科、形成外科や整形外科の手術が比較的多く行われています。手術件数は多いですがスタッフも多く、心臓外科(縦2件2列)を含め、緊急手術以外のほぼ全てのオペが夕方5時半には終わります。時間内に終わらない、あるいは緊急オペが入った時などは、入院して待っている定期の患者さんが急遽手術キャンセルなり、帰宅になることもあります。患者さんも怒るかと思いきや、「仕方ないね」と笑って帰ってくれるのです。

以前、イギリスから移住してきたとある担当患者さんは、「オーストラリアの医療スタッフは夜勤の真只中でも、いつも本当に機嫌よく楽しく働いているね。みんな優しいから嬉しいね。」と驚いていました。システムとしてオーバーワークが少なく、休暇が多い分、気持ちに余裕ができて、いつも楽しく勤務ができるのかも知れませんね。病棟にも、患者さん満足度評価の結果と一緒に、スタッフ満足度の調査結果が掲示されています。患者さんと同時に、スタッフも大切にするこの国の文化に感激したことでした。

休暇についてですが、真面目な日本人の私は、勤務初日にもらったスケジュール表を見て、平日に時々ある「オフ」の理解に苦しみ、「この日は何をしたらいいのですか?」と指導医に聞きに行ったことがあります。私の指導医は一瞬怪訝な顔をした後、大爆笑し、「貴女、本当に日本人ね!オフは休みの日よ、自分の好きなことをして。病院に来たりしなければ何をしてもいいから!」と言い、事あるごとにみんなにそのエピソードを話してまわるのでした。そして日本より多くの休みがある分、また真面目な日本人の私は、ここまでお休みがあるのに体調不良だったり勉強不足だったりしては言い訳ができない!と焦り、最初はドキドキして休みどころではなかったのですが、最近はしっかり自分や家族のために体と心を休め、翌日のパフォーマンスを上げるために休暇を使うことが出来るようになってきました。

ちなみに最近のオーストラリアの休日についてですが、「イースター(復活祭)ホリデーは、2024年は3月終わり(Good Friday, Easter Saturday, Easter Sunday, Good Monday)の4連休でした。オーストラリアでは金曜日と日曜日には教会にミサに行き、家族でゆっくりと過ごしたり、旅行に行く方人も多いようです。人通りはぐっと少なくなりお店も多くが休業となりますが、ショッピングモールなどに行くとイースターバニーが子どもたちにチョコレートをくれます。我が家も教会に行った後はホットクロスバン(十字架があしらわれたフルーツやチョコレート入りのパン)を食べ、イースターエッグのチョコレートハンティングをして楽しく過ごしました。

最後に、院内の写真等が撮れない分、病院の日本カフェの様子をご紹介してお別れしたいと思います。院内の「コバ」というカフェには巻き寿司や刺身、照り焼き丼やカレー、味噌スープ、抹茶ラテなどの日本食が揃っています。1番人気はサーモンアボガド巻き寿司でお昼前には売り切れてしまいます。変わり種としては豆腐いなりの巻き寿司などもあります。日本が恋しくなったら立ち寄る、私の小さなオアシスです。

1年間のメルボルンでの臨床留学を終えて: 新天地ニューサウスウェールズへ

私が感じた最も大切な麻酔科医としての資質は手術室でのコミュニケーション能力でした。麻酔科医としての仕事として、挿管やAline、CV、経食道エコー や硬膜外麻酔、神経ブロックなどの手技ができるということは、麻酔科医としての能力の、本当にごく一部に過ぎない。

この手術で外科医は麻酔科医に何を期待しているのか、いないのか、患者さんとの話の中で、何がその方にとってベストな麻酔、ペインコントロールなのかについて、話し合って決める、そのコミュニケーションのプロセスが何より大事で、麻酔科医、集中治療医としての醍醐味はまさにそこにあると痛感させられました。

私は集中治療や心臓麻酔が大好きですが、それは他職種とのコミュニケーションができるから。そしてそれが患者さんのアウトカム向上に直結する、それが何よりのやりがいでした。

こちらの麻酔科医は本当によくコミュニケーションを取ります。日本では何気なく取っていた手術室でのコミュニケーションが、母国語でなくなるとこんなにも心理的ハードルが上がるのか、と最初は愕然としました。そして私以外はほぼ全員が英語ネイティブばかりの職場で、コミュニケーションの真髄は何なのかについて深く考えさせられました。

また、この1年でプライベートでも様々なことがあり、仕事と自分の人生の方向性について考えさせられました。自分の強みやレジリエンスも、逆に自分の弱さも思い知りました。また、家族が緊急手術を受けることになり、オーストラリアの医療の良いところ悪いところ、それと比較した日本の医療システムについても考えさせられました。麻酔科医として働きながらみる医療と、患者、患者の家族として受ける医療はまた違うものがありました。

そして自分に足りないものや、家族の今後を考え、またより深くオーストラリアの医療を知るため新たな職場での新たな学びを求め、ニューサウスウェールズ州に引っ越し、区域麻酔、産科麻酔を更に学ぶことにしました。今回は、メルボルンのような都会の真ん中のハイボリュームセンターではなく、高知県のような地域に密着した病院で、今年は経験できなかった無痛分娩やトラウマを含めた幅広い周術期管理を経験したいと思っています。

最後になりましたが、このような貴重な機会を得ることができたのは、日頃よりご指導くださっている188bet体育_188bet赌场-【平台官网】麻酔科の先生方、そしてご支援を惜しまず送り出してくださった同門の先生方のおかげであると、心より感謝申し上げます。メルボルンでの1年間の経験を糧に、次なるニューサウスウェールズでの研修も大切に積み重ねてまいります。今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。