公開日 2025年2月10日
活断層が少ない岡山県で有馬型温泉水成分を発見
―西南日本の前孤地域でスラブ起源の深部流体が普遍的に上昇している可能性―
大学院農林海洋科学専攻2年の秋柴愛斗さんと総合科学系複合領域科学部門の西尾嘉朗准教授は岡山県の温泉水から「有馬型温泉水」(※1)と類似したリチウム同位体組成を発見しました。西南日本の前弧地域(※2)には活火山がなく、沈み込んだフィリピン海プレートの脱水に由来する流体が地下深くに存在しています。特に若くて熱いフィリピン海プレートが沈み込む地域では、スラブ起源流体(※3)が地表にまで上昇する可能性が指摘されています。
これまでスラブ起源流体の上昇は大断層周辺の一部の温泉水からしか確認されていませんでしたが、岡山県での発見は、西南日本の前弧地域で広くスラブ起源流体が温泉水に含まれる可能性を示唆しています。
この研究成果は、188bet体育_188bet赌场-【平台官网】7年2月5日、日本地球惑星科学連合が運営する、オンライン科学誌「Progress in Earth and Planetary Science」に掲載されました。
※1 有馬型温泉水:有馬温泉に代表される温泉水の分類。水の水素と酸素の同位体比や温泉ガスのヘリウム同位体比の結果から、有馬型温泉水は沈み込んだフィリピン海プレートに起源を持つ可能性が指摘されている。有馬型流体や有馬型深部流体とも呼ばれる。
※2 前孤地域: 海溝と火山前線の間の非火山地帯。
※3 スラブ起源流体: 沈み込んだ海洋プレートに由来する流体。海洋プレートが地下に沈み込んで高温?高圧状態にさらされると、堆積物の隙間や鉱物から多量の水が絞り出される。このときに生成される流体がスラブ起源流体と呼ばれる。
【プレスリリース】活断層が少ない岡山県で有馬型温泉水成分を発見[PDF:536KB]
【論文情報】
<論文名>Lithium and strontium isotope hydrogeochemistry in Okayama and Tottori Prefectures, southwest Japan: Implications for tracing slab-derived fluid